ウルトラ・サン・チャイルド [2013]
願いを受けて輝く子供
《ウルトラ・サン・チャイルド》は、《サン・チャイルド》の原型をもとに、ステンレスで覆うことで、光沢を帯びて光を反射したり、鏡面となって周囲を映し出す巨大な彫刻作品である。世界各地を移動し、人々の願いを受けてきた《サン・チャイルド》が手だけではなく、全身が輝く存在となり、光の神像として進化した姿とされる。
「あいちトリエンナーレ2013」において、美術館で結婚式を挙げるインスタレーション《太陽の結婚式》における神像として胸像が制作された。もともと《サン・チャイルド》は、熊本の結婚式場のプラン「太陽の神殿」の神像として設置される予定であった。また、《サン・チャイルド》だけではなく、ヤノベケンジのさまざまな作品が実際の機能を持ちながら展示される、ミュージアム型の結婚式場になる予定であった。しかし莫大な予算がかかるため、実現するには至らず、「あいちトリエンナーレ2013」では、その一部を実現する形がとられた。
展示された愛知県美術館では実際に結婚式が行われ、美術館を結婚式場に変えることが試みられた。そもそも近代文明は、神や神殿・教会から、思想や科学、アートが分化して発展してきた歴史があり、同時に、原発事故に代表される多くの過ちも起こしてきた。「太陽の結婚式」は創造の起源に遡行し、分化した関係を「愛」によって「結婚」、「再生」させるという意味があった。
そして、《ウルトラ・サン・チャイルド》は、悲惨な災害と事故を乗り越え、新たに「結婚」をして文化を育む人間の精神の再生を宣言するものとなった。展覧会終了後、愛知県内のギャラリーなどを備えたエンターテインメント施設の敷地に、全身像が創られ恒久設置された。