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    太陽の結婚式

    愛と美の復活

    2013 年、第2 回目となる「あいちトリエンナーレ」が「揺れる大地—われわれはどこに立っているのか:場所、記憶、そして復活」というテーマで開催されることになった。このテーマが東日本大震災を受けてアートへの根本的な問いかけを孕んでいることは明白であった。

    ヤノベケンジは早々に参加アーティストとして招聘され、《サン・チャイルド》はトリエンナーレのメインビジュアルとして選ばれた。ヤノベが「あいちトリエンナーレ2013」で提出したプランは《太陽の結婚式》である。《太陽の結婚式》はヤノベが出展する愛知県美術館内で結婚式を行うプロジェクトであった。

    ヤノベは《サン・チャイルド》の制作の後、〈太陽の神殿/サン・チャイルド島〉というプロジェクトを構想していた。〈太陽の神殿〉は、熊本県・阿蘇の丘を想定し、人工湖の中央に浮かぶ小島の地下に結婚式の出来る大聖堂を作るプロジェクトである。島はモン・サン=ミッシェルをイメージし、旧約聖書のモーゼの葦の海(紅海)の奇跡のように、湖が二手に分かれてカップルが大聖堂に入れるような構想になっている。

    そこには、大理石製の《サン・チャイルド》や、着衣室の機能をもつイッセイ・ミヤケとのコラボレーション作品《クイーン・マンマ》(2002)、《ラッキードラゴン構想模型》、《ファンタスマゴリア》など、ヤノベの代表作が一同に展示され、ミュージアム型の結婚式場にもなっている。

    「あいちトリエンナーレ2013」では、〈太陽の神殿〉の一部を実現する形で、想定しているヤノベの作品や構想模型が集められた。また、新作としてステンレス製の《ウルトラ・サン・チャイルド》や動物の形態が彫り込まれ《チャーチ・チェア》、《サン・チャイルド(ステンドグラス)》(2012)と新たにビートたけしが原画を描いたステンドグラスを組み込んだ小型礼拝堂《太陽の礼拝堂》を制作し、インスタレーション作品《太陽の結婚式》として構成した。さらに、20 世紀美術を中心に収集されている愛知県美術館のコレクションから、アンリ・マティスの《ロンサール恋愛詞華集》(1948)のリトグラフを《太陽の礼拝堂》内に展示し、晩年の大作《ロザリオ礼拝堂》(1948–1951)へと至るプロセスを暗示させた。

    〈太陽の神殿〉が、ミュージアム型の結婚式場ならば、《太陽の結婚式》ではミュージアム自体を結婚式場に変換することで、鑑賞者が結婚式(愛)を通して美の起源を知る(知)ことを試みた。それは「愛知」という名前にかけたものであるが、愛知県が結婚式を専用に行う教会(結婚式教会)が多いという場所性を考慮したものでもあった。また〈太陽の神殿〉は、近代科学の太陽の神殿とも言える原子力発電所がもたらした過ちを改め、新しい太陽の神殿を作る試みでもある。その端緒として《太陽の結婚式》によって現代文明において分化している神・愛・美を根源に遡行して「結婚」させようとした。

    《太陽の結婚式》では、実際のカップルの結婚式が行われ、結婚式場と化した美術館は祝祭に満ち、愛と美の関係を幸福な形で復活させるプロジェクトとなった。また、21 世紀の美術や美術館のあり方について一歩踏み出したヤノベの試みは、来賓者を含めた多くの鑑賞者に記憶されることになった。それはアートという枠組みを超えた人間の精神の復活・再生の儀式でもあったのだ。

    プロジェクト期間:2013 年4 月– 8月

    プロジェクトチームメンバー:

    阿部彩花、池川瑞貴、奥津陽彦、加藤弓絵、金丸涼花、川島加那瑛、木下瑞穂、久保田天志、篠原美由、高柳美里、中村暖、中村ヒカル、古川真伊、保尾美里、松岡冴、三浦歩未、森野智美、柳田佳和里、横山瑞華、脇谷緩

    Wedding Ceremony of the Sun
    • Wedding Ceremony of the Sun
    • 太陽の結婚式(インスタレーション)
    • 制作年 2013年
    • 素材 作品《ウルトラ・サン・チャイルド》《太陽の礼拝堂》《サン・チャイルド(ステンドグラス)》《チャーチ・チェア》他
    • サイズ サイズ可変cm
    • 所蔵 

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