フローラ [2015]
芽吹く花の女神
《フローラ》は、植物の化身であり、色鮮やかな衣装を身に着け、頭部と手に花の装飾品を持ち、眼を閉じた状態で座り、立ち上がりながら、手を広げて目を開けることを繰り返す巨大な少女像である。衣装や頭部、手のオブジェなどの装飾部分を色彩豊かな表現で知られるアートディレクター・アーティストの増田セバスチャンがデザインし、ヤノベケンジと共同制作した。
《フローラ》は、2015 年の「琳派400年祭」の一環として、京都府立植物園で開催された「PANTHEON -神々の饗宴-」において初めて公開された。「PANTHEON -神々の饗宴-」では、ヤノベケンジ、増田セバスチャン、高橋匡太の3 人のアーティストによる共同制作が行われた。「PANTHEON -神々の饗宴-」は、琳派の象徴的作品である「風神雷神図」を立体化するということをテーマにしており、「風神」「雷神」に見立てられた彫刻作品とともに、空白の中央部を埋める作品として《フローラ》が考案された。最初に「風神雷神図」を描いた俵屋宗達は、慶派
や院派など当時一流の仏師が総動員された、三十三間堂の「風神」「雷神」をモデルにしたという説がある
ヤノベは、何も描かれていない「風神雷神図」の中央部の金箔を、三十三間堂の千体もの観音像の後光を表す隠喩的表現と捉えた。そして、もとは3次元だった「風神」「雷神」「観音」を400年の時を経て再び3次元にするプロジェクトとした。
そして、《サン・シスター》のプロトタイプに装飾を施し、《フローラ》に生まれ変わらせた。《フローラ》は、京都府立植物園の「 フローラ( 植物相)」とその名前の由来の花の女神「フローラ」、「観音」をイメージし、蓮華や尾形光琳の《紅白梅図屏風》 の水紋などがデザインされている。また、半透明の衣装の中に、カラフルなオブジェが埋め込まれており、内臓のLEDが光ることで、神秘的な輝きを放つ。増田セバスチャンとのコラボレーションにより、ヤノベ作品の新しい可能性が開かれることになった。
《サン・シスター》の遺伝子を引き継ぎ、花の芽吹きと希望の訪れを連想させる《フローラ》は、二本松市で開催された「福島ビエンナーレ2016」など各地で展示され好評を博している。